車社会の地方で車なしで生き抜く方法
家と職場が公共交通機関で結べれば良い。ただし車は欲しくなる。
はじめに
毎朝満員電車に揉まれながらも通学していた横浜出身の私が、就職を機に車社会の地方へ引っ越して衝撃を受けたことと、いかにして車を使わずに生活できるかを考えた結果を書き残しました。私の独断と偏見の塊となりそうな記事ですので、うんうん確かに理解できないよね、いやそれはお前がおかしいといった様々な感想を抱きながら読んでいただけると幸いです。
本記事を読むに当たって、抑えていただきたい執筆時の筆者の通勤状況を以下に記します。
- 家から職場 A まで車で 30 分程
- 家から職場 B まで歩いて 30 分程
- 家も職場 A も B も最寄り駅から 1–3 km
車社会での違和感
人が歩いていない
ゴーストタウン?ではありません。歩いている人よりも走っている車の方がたくさん見かけるのです。体感としては人:車が 1:40 くらいの割合で、熱唱しながら歩いても変な目で見られることは大抵ないでしょう。歩いている人が多く目撃できるエリアは駅周辺と通学時間帯の学校周辺といったところです。18 歳になるまでは運転免許を取得できないので、歩く未成年を多く見かけるのは当然ではあります。
200 m 先のコンビニまで車で行く
これは本当です。職場で地方出身の方に質問すると、9 割がそう答えたのです。都会育ちからすれば 100 m、200 m は歩いてすぐの感覚のはずですが、地方育ちの方々は歩いて移動するという手段を持ち合わせていないようにも思えました。また、大型ショッピングモールの端から端までの移動にわざわざ車を使うという事例も聞いたことがあります。歩くための足というよりかはペダルを踏むために足を持っている人が地方には多いように感じました。
自転車は思っていたより走っていない
自転車は学生の乗り物、そう感じられるくらい通勤や買い物で自転車に乗る人は少ないです。どの駅も駐輪場はあるので、家→駅は自転車で移動できます。しかし、駅→職場も結構な距離があるのが地方なので、自転車通勤が中々実現しないのが現状です。ちなみに、異国語を喋りながら走る自転車集団をときどき見かけます。彼らは外国人技能実習生で、職場から自転車通勤できる距離の寮やアパートを会社から用意されていることがほとんどです。
一時停止を知らない車が多過ぎる
赤い三角形の標識を止まらず過ぎ行く車を多く見かけます。「歩いている人なんてほとんどいないから別に良いでしょ」、「轢かなければ大丈夫」と思っているドライバーが多いのでしょうか。道路交通法第四十三条に違反します。また、車線変更で方向指示器を使わない車 (道路交通法第五十三条違反) も結構な頻度で目にします。少しドキッとした方、より一層安全運転を心がけましょう。
雪が降ると歩道が消える - 降雪地域
雪で歩道が白くなって見えなくなるという意味ではありません。車道に積もった雪が歩道に寄せられて雪山となり歩けなくなるのです。駅前や学校周辺などの歩く人の多いエリアでは歩道も除雪されますが、国道や幹線道路では車の通行が優先されるため歩道はほぼ除雪されません。よって、雪が降り積もると歩行者は車道の端を歩いたり別の道に迂回したりすることを強いられます。加えて自転車での走行は不可能です、諦めましょう。
車通勤の良いところ
時刻表を気にしない - いつでも移動できる
電車通勤なら、何時何分の急行に乗りたいから家から駅までダッシュする、直通列車に乗るために仕事を早めに切り上げるといったことが起きると思います。しかし車通勤なら時刻表に縛られないため、ダッシュで息を上げることはないですし、あとちょっとの仕事も気兼ねなくこなせるのです。1 時間に 1 本 2 本しか列車やバスが来ないエリアに住むと、尚更このメリットが際立ちます。
自分だけの空間が味わえる
独り言・愚痴・熱唱、車の中なら他人の目を気にする必要がありません。大人同士で椅子取りゲームすることはなく、乗車率 200% 超えで押し潰されることもなく、いつでも指定席で通勤することができます。さらに、その空間と時間は行きと帰りの 1 日 2 回確保されているのです。地方暮らしの一部の方が、都会に憧れない理由に満員電車を挙げます。きっとその背景には、自分だけの空間を大切にしたい気持ちがあるのでしょう。
仕事終わりに米 10 kg を買って帰れる
重たい荷物や大きい荷物を気軽に買えるのは、自家用車の良いところです。普段の買い物で、牛乳は 1 本から 2 本に、米は 2 kg から 10 kg にと量を増やせるのです。まとめ買いによるちょっとした出費節約にもなりますし、買い物の回数も減らせます。さらに仕事帰りで、そういえば扇風機もう 1 台欲しいなと思って、家電屋やホームセンターに寄って買って帰るという鉄道通勤ではできない買い物もできます (筆者は仕事帰りにニトリに寄って遠赤外線ヒーターを買ったことがあります)。
車なしで生き抜く方法
地方育ちからすれば車を持たないのは愚行であり、その方法を考えるのも無駄です。しかし、就学・就職・転勤などで車を持っていない都会育ちが地方に移り住むとなったとき、購入・保険・車検などの高額出費を避けたいと思うはずです。では、自家用車なしで地方で生きていくためにはどうすれば良いでしょうか。
鉄道・バスで通える職場・校舎を選ぶ
賃貸物件は、過疎地域でない限り (Google マップの航空写真で人が住んでいそうである限り)、基本的には存在します。したがって家選びよりも、職場・校舎選びが重要となります。多くの高校・大学は、自動車免許を持たない学生が通うため、駅かバス停のどちらかが校舎の近くにあります。しかし、地方企業、特に工場は駅から遠い場所 (地価の安い地域) に立地します。そして、広大な駐車場が敷地内にあり、従業員のほとんどが車で通勤します。よって、バス利用数が僅かしか見込めないために、バス路線がないケースが多いです。尚、筆者の通勤先は沿岸部の工場で、最寄りのバス停も徒歩 25 分だっため、車での通勤となりました。
徒歩・自転車で通える家を選ぶ
個人的な感覚ですが、徒歩ならば 30 分、自転車ならば 40 分くらいが限界でしょうか。地方は信号が少ないので、移動時間がそのまま通勤にかかる時間となります。ただし、雨が降れば視界が悪くなり雪が降れば道が悪くなるので、実際は徒歩 20 分、自転車 30 分くらいが限度になると思います。大学生は、大学の校舎の周りに学生向けの物件がありますので、そこから自分に合う物件を選べばよいでしょう。前述のような駅から遠い工場への通勤する場合は、賃貸物件の条件のこだわりをできる限り捨てましょう。そうすれば、徒歩・自転車での通勤は実現できます。尚、コンビニやスーパーマーケットなどは徒歩ではなく自転車で行くところだと割り切った方が良いかもしれません。
リモートワークを選ぶ
リモートワークを選べば、仕事に車が必要なくなるため、あとは個人の生活に車が必要かどうかを問うだけです。緑豊かな大自然に囲まれて住むも良し、高い建物がなく空が広く感じられる住宅街に住むも良し、物件選択の幅は相当広くなります。ただし、都会から地方へ移住する場合は、なぜ自分が地方に住みたいかをしっかり定めておいた方が良いでしょう。誰かに強制されたからではなく自分で移住を選んだのですから、後に後悔するようなことは避けておきたいですよね。
相乗り通勤をする
車なしで生き抜く方法の一つとして、相乗り通勤が挙げられます。しかし、筆者の職場では相乗りしている社員を見聞きしたことがありません。家族内で相乗りしたり、飲み会のある日だけ相乗りさせてもらったりは、筆者も経験があります。けれども、相乗りを常用している例、特に社員同士の相乗りの例は皆無と思われます。
実例をもとに公共交通機関にこだわってみる
筆者の生活圏である富山県西部 (高岡市と射水市) を例に、公共交通機関で通勤できるかを考えてみましょう。路面電車を含めた鉄道が 4 路線もある高岡市 、しかし富山県は世帯当たりの自動車保有台数が全国都道府県でトップ 3 に入ります。その理由も確かめてみましょう。
駅から徒歩 10 分の職場の場合
1 つ目の例として、駅から徒歩 10 分の職場に通勤するとします。下図のうち、黒色の線は鉄道路線を示し、青色のエリアは最寄り駅まで徒歩・自転車で通いやすいエリアを示しています。図中に示す移動時間は、筆者の 4 年間の在住で得た感覚から算出されています。
鉄道で通勤する場合、職場から路線 1 本で行くことができれば 30 分程度で通勤できるでしょう。乗り換えを含めて良いのであれば、通勤可能エリアは別の沿線まで広がり、1 時間や 1 時間半程度で通勤できます。尚、地方においては列車の運行本数が気になるところですね。しかし、その心配は要りません。通勤・通学の時間帯は 1 時間当たり 2–5 本程度走っていますので、十分通勤できるしょう。
対して、自家用車を使用すると、鉄道で 30 分かかっていたエリアは 15 分で、60 分かかっていたエリアは 30 分で通勤できるようになります。乗り換え含めて 1 時間以上の鉄道通勤が強いられていたエリアも、半分以下の時間で通勤できてしまいます。結果として、鉄道またはバスが通っていない・本数が少ないエリアでも通勤ができるだけでなく、通勤時間も短くなるのです。
駅から徒歩 30 分の職場の場合
2 つ目の例として、職場が駅から遠い場合を考えてみます。まず、徒歩 30 分は現実的ではありません。駅と職場の間を自転車で通えば良いかもしれませんが、その自転車は駅の駐輪場に休日置きっぱなしになります。駅からバスで通う手段も考えられますが、前述の通り職場に十分な本数のバスが通っているとは限りません。即ち、職場が駅から遠いと、どの移動手段でも何かしらの難があるのです。
ところが自家用車を使うと、通勤可能エリアが鉄道路線を無視して一気に広がります。地方路線や地方自治体は、公共交通機関の利用を日頃から促しています。しかしそれでも自家用車を住民が使いたがるのが、図を見て納得いただけると思います。少子化や都会への人口流出も踏まえれば、本数減少・廃線化も自然の成り行きといえるでしょう。
車無しは不可能ではないが現実的ではない
家と職場 (校舎) の両方が公共交通機関の通っているエリアにあれば、自家用車がなくても通勤・通学ができるでしょう。しかし、この条件が揃いにくいのが地方の現実です。さらにこの条件が揃ったとしても、通勤時間を短くしたくなったり、買い物・お出かけの自由度を上げたくなったりすると、結局自家用車を持った方が良いという結論に至ります。
筆者は、安全運転に気が張って疲れたり、道をできる限り間違えたくなかったり (歩行者は簡単に U ターンできるが車はそうはいかない)、目的地の駐車場の空きを心配したりと、車特有の負担が苦手です。よって、本当は公共交通機関で通勤・お出かけしたいのですが、本数が都会と比べて少ない、行けるエリアが限られる、交通系 IC カードが使えないなどが実情です。地方に引っ越してから感じている出不精気味を、外部要因のせいにしたい気持ちが少しある筆者でした。
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